バクマン。第15話「デビューと焦り」の感想と考察
バクマン。の第15話「デビューと焦り」を見たので、感想を書きたいと思います。
食い入るように土曜の午後6時にテレビの前にすわっている自分を家族は不思議そうに見ています。
かなり真剣に見ているので、家族はすごく突っ込みたい様子ですが、気にせず番組を見終わりました。
今日は編集部でのライバル、新妻エイジとの接触から、ヒロインあずきのデビューまでの道のりでした。
それでは、あらすじを見ていきましょう。
第15話「デビューと焦り」あらすじ
ジャック編集部
敏腕編集者服部さんから「半年で納得の行くネームをつくってもらう」と要求されたサイコーとシュージン。
もし納得のいくネームが出来なかったら、服部さんの「王道」に対する「邪道」の路線で行ってもらうと約束するサイコーたち。
服部さんは、王道のリスクを説明します。
「今のジャックの王道に死角はないと思うけど」
とか
「王道かぁ。王道こそ載せてみないとわからない」
とリスクが未知数であることを言います。
また普通の新人が、王道バトル漫画のいいところを持ってきて、本来の要素が欠けることを指摘します。
ここで服部さんが重要なポイントを指摘します。
バトルものの基本要素
- 読者が違和感なく世界観に入り込める設定
- なぜ戦っているのかという理由の納得感
- 分かりやすいバトルの展開
- 主人公以上に個性的な敵キャラ
- できれば可愛いヒロイン
- 少しの笑いと泣けるシーン
と服部さんは挙げています。これについてはあとで考察します。
また追加で
- あまり話を作ってはいけない
と指摘します。話を作っては、読者に見抜かれてしまうとのことです。
計算しないで漫画を書く方法
そこで頭を悩ませていた3人の前に、新妻エイジが登場します。
「考えなくて描けばいいんです。」
と言います。考えて描かなくてはいけないネームについては、エイジは
「考えてネーム書きたくないです。」
「ネームを書きたくないです。」
という次第。
最後のセリフは安西先生に「バスケの練習をしたくないです」というような感じです。
20ページ近くの話数2話分を30分で書き上げたことを服部さんが指摘すると、
「好きなキャラは勝手に動く。ムーブ」だと言います。
楽しんでかけて楽しければいいという究極の漫画の描き方をサイコーとシュージンに言います。
圧倒的な天才の存在の前に、サイコーとシュージンは萎縮します。
しかし、いつ連載するのかと聞くエイジに対してサイコーは宣言します。
「新妻さんに追いつきます。僕達が連載するまで、連載していてください」
と。また連載陣のなかで一位を取ると言っているエイジに対して、
「そんなに甘くありません」
と釘を指します。ツンツンです。
圧倒的な天才に対して、ライバル心がありありです。
ここについても後ほど考察します。
澄んだ瞳
帰りのタクシーの中で、エイジは編集担当者に言います。
「背の小さい方(サイコー)は、一人でも上がってくる」
なんで、と編集が尋ねると,
「目が澄んでて、中が燃えてる。ギャオー」
と言います。最後のシャウトはともかく漫画家らしい表現です。
どう描けばいいか?
編集部を後にしたサイコーとシュージンは、どう描けばいいか迷います。
そこで2つの方法があることに気づきます。
- 計算せずにキャラが勝手に動くような漫画
- 計算されていないように計算して描く漫画
です。
一つ目は新妻エイジみたいに、キャラが勝手に動くという漫画。
二つ目は計算しているのに、計算していることが読者に気付かれずに描かれる漫画。
サイコーとシュージンは、絵をサイコーが、シュージンが原作をするというユニット「亜城木夢叶(あしろぎむと)」なので、必然的に後者の計算して計算していないように見せる漫画になります。
サイコーとシュージンは「俺達の戦いはこれからだ」と、第一部感。
のようなセリフで終わります。
ヒロインのあずきのオーディション
今週はヒロインのあずきの家(八王子)に、シュージンの彼女のみよしが訪れて語る方式になっています。
本作品の名司会者であるみよしに語らせるような形です。みよしの名司会者ぶりについては前回述べました。
バクマン。の舞台は埼玉県谷草市ですが、草加と谷塚の両方からとられたとWikipediaにはあります。
ですので、草加駅から八王子に行く場合、駅探で調べると、以下のようになります。
草加 15:35発 − 八王子 16:51着 乗り換え回数:3回 所要時間:1時間16分 料金:1,050円 ●草加 | 15:35発 | 東武伊勢崎線(急行)[南栗橋行]5分 | △15:40着 ○新越谷 | 15:40発 | 徒歩6分 | 15:46着 ○南越谷 | 15:48発 | JR武蔵野線(普通)[府中本町行]40分 | 16:28着 ○西国分寺 | 16:35発 | JR中央線(快速)[高尾行]16分 | 16:51着 ■八王子
谷塚だとすると、
谷塚 15:32発 − 八王子 16:51着 乗り換え回数:4回 所要時間:1時間19分 料金:1,050円 ●谷塚 | 15:32発 | 東武伊勢崎線(普通)[北越谷行]2分 | △15:34着 ○草加 | 15:35発 | 東武伊勢崎線(急行)[南栗橋行]5分 | △15:40着 ○新越谷 | 15:40発 | 徒歩6分 | 15:46着 ○南越谷 | 15:48発 | JR武蔵野線(普通)[府中本町行]40分 | 16:28着 ○西国分寺 | 16:35発 | JR中央線(快速)[高尾行]16分 | 16:51着 ■八王子
片道1050円もかかります。
往復で2100円です。みよしは高校の制服を見せたかったようです。
しかしあずきの谷草市にあった家はかなり豪邸だったので、持ち家と思いましたが、
八王子の家も持ち家のようです。
かなりの資産家なのでしょうか。あずきママのヘアスタイルもパーマぱねぇです。
ベルサイユの薔薇とか少女革命ウテナとかに出てきそうなヘアスタイルです。
あずきは、サイコーの漫画家になるという夢に対して、声優になるという夢で対抗する恋人の設定。
オーディションに落ちてしまい、落胆しているあずき。
そこにみよしが訪れて、サイコーとあずきの二人の様子を非同期にみよしがつなげます。
メッセンジャーガールみよしの真骨頂です。
あずきは現在「聖ビジュアル女学院高等部」というアニメの声優オーディションに挑んでいます。
原作は、ヤングスリーで連載中とのことでした。
タイトル的に深夜アニメのような感じです。
内容は危なくないですよ的にあずき妹とみよしがコントでイメージを説明します。
深夜っぽいけど18禁のようなのじゃないよオーラが漂っています。健全です。
何かにふっきれたかのようにあずきはオーディションに臨みます。
サイコーとシュージンの会議
あずきからメールでオーディションに受かり、声優デビューすることをサイコーは知ります。
「待っててください」という弱気のメールをうつと、あずきから怒られます。
卒業式の日の言葉を覚えてるって。
あの言葉「ずっと待ってる」は本気だと。
サイコーは怒られて幸せのようです。マゾだと自分で告白します。
その後、シュージンに言われます。
お前は「M(マゾ)でなくN(ナルシシスト)」だと。
考察
今回は2つの点で考察します。王道マンガの基本要素と、計算されないように計算する方法です。
まず王道マンガの基本要素を見ていきましょう。
1.王道マンガの基本要素
服部さんがサイコーたちに次のような要素が王道ファンタジーバトル漫画にあると指摘しました。
- 読者が違和感なく世界観に入り込める設定
- なぜ戦っているのかという理由の納得感
- 分かりやすいバトルの展開
- 主人公以上に個性的な敵キャラ
- できれば可愛いヒロイン
- 少しの笑いと泣けるシーン
これはジャンプのヒット漫画(バトル物)の共通項かも知れません。
例えばNARUTO、北斗の拳、ドラゴンボールを見ていきましょう。
作品名 | 違和感ない世界観 | 戦う理由 | バトル展開 | 魅力的な敵キャラ | 可愛いヒロイン | 笑いと泣けるシーン |
---|---|---|---|---|---|---|
北斗の拳 | 核戦争後の未来 | 愛 | 拳法 | 兄弟 | 聖母のような存在 | 雑魚キャラがやられるときの悲鳴、敵キャラの死の前の回想 |
ナルト | 学園という初期設定 | 友 | 能力バトル | 能力が異なる敵キャラ | 主人公をめぐるタイプの違う複数のヒロイン | 仲間や家族の死 |
ドラゴンボール | 近未来だけど田舎 | 戦闘民族の血 | 拳法(体術)を中心とした展開 | 異星人やサイボーグ | 理系女子 | クリリン関係 |
どれも練られた後があり、必ず必須の共通項です。
「できれば」可愛いヒロインなので、千差万別なところですが、北斗の拳がヒロインが後半にユリア一本化したのに対して、ドラゴンボールは中心のヒロインを定めず、ナルトは分散させてリスクを図っているところが違います。
違和感ない世界観は、現実から何らかの延長がひかれているところです。
魅力的なキャラというのも必須のようです。どの漫画にも主人公より人気のあるキャラがいます。
北斗の拳だとラオウ、ナルトだとカカシ、ドラゴンボールだとベジータなど、必ずキャラが立っています。
このように服部さんの分析はかなり適切です。
2.計算しない漫画と計算する漫画
- 計算せずにキャラが勝手に動くような漫画
- 計算されていないように計算して描く漫画
これは難しいと思うのですが、キャラが勝手に動くような漫画は、新妻エイジのような天才肌が
描く天然の漫画のようです。
逆に後者は、ネームから緻密に笑いと泣きを含め、計算されて作られるもののようです。
大ヒットになるのは、才能型だけど、何本もヒットを生めないデメリットもある。
逆に計算されているほうは、大ヒットは飛ばせないまでも、ヒット作を連発することができると、
服部さんが言っていたように思います。
原作がつく漫画は、後者のようです。
おそらく計算して書く部分と、計算外で話が進む部分があるように思います。
これはいろいろな漫画を思い浮かべると、あーあれは計算しているなぁとか、あれはキャラが勝手にしゃべっているなぁとか判定できると思います。
例えば明日のジョーは、原作が高森朝雄(梶原一騎)先生、漫画がちばてつや先生でした。
これは原作があるので、計算していないように計算して作る漫画です。
ところが最終回でジョーが真っ白な灰になっちまったという場面は、原作者の思惑を超えて、ちばてつや先生が独自に、ジョーにしゃべらせたと聞いたことがあります。
灰も残らぬほど創作に燃え尽き / ちばてつやと『あしたのジョー』感動のラスト
原作者の実弟で作家の真樹日佐夫氏(当時70)が語るところによると、
「俺はちばさんに渡す前の梶原の原稿を読んでいた。
最終回の白く燃え尽きるコマの前には、段平がジョーのそばに行って『お前は試合に負けてケンカに勝ったんだ。そう思え』とリングで語りかける場面が書かれていた。
そして時が流れ、ジョーはパンチドランカーとなっている盟友カーロス・リベラとともに療養所の庭みたいな所にいて、日差しの中、2人して笑顔で戯れているシーンで終わっている」
この案に猛反対したのが作画を担当した漫画家・ちばてつや氏(71)だった。
真樹氏は電話口で火花を散らせた両者のバトルに立ち会っていた。
「梶原が自分の原稿を電話で伝えると、ちばさんは『これだけ長く15回戦の試合を描いてきたのに、いくら何でも段平の“ケンカに勝った”はないでしょう』と反論し、ケンカになった。
梶原は『じゃあ、勝手にしろ!!』とかんしゃくを起こし、ちばさんは『やらせてもらいます!』と電話を切った。
それで、あの結末になった。
ちばさんが正解だったとは思うんだけれども、それは結果論。梶原の頭の中ではジョーを死なすつもりは毛頭なかったんだよ」
とあります。
計算してつくった物語の中の登場人物が自分で語り始めるという好例かも知れません。
ヒットする作品の多くはそのようなプロセスなのではないでしょうか。
登場人物を計算した環境の中で育てていって、途中で自分で語りだすという流れが自然なのかも知れません。
最初から好き勝手なことを言っていても、読者の感情移入する下地が少ない分、浮いてしまうように思います。
バクマン。は漫画を考え直すヒントをくれます。
次回も楽しみです。