クラウド時代にSIerは必要なのか?人月モデルはどこへ行くのか?

クラウド時代にSIerはどう生き残るのか? 人月ビジネスからどう脱却するのか? 大手SIer役員にインタビューしました

を見てみました。Publickeyさんは、いい記事書くなあ。


インタビューの中で一番興味深かったのは次の箇所です。

正直に言って、人月を変えるのはこれまでの長い習慣などの理由で非常に難しいでしょう。

けれど変えなくてはいけなくて、そのための例え話として私はよく鉄道の話をしています。

すなわち、東京駅を朝8時の電車で大阪に向かったとき、各駅停車では夕方5時頃に到着しますが、新幹線なら10時台には到着します。

このとき、新幹線は2時間しか働いていないのに特急料金をとる。それはなぜなのか、ということ。

クラウドが進むと、SIerの立場はどうなるのか、人月モデルはどうなるのでしょうか?



クラウドSIer

システムインテグレーターの多くの役割部分が、クラウドに代替可能になってきています。


これまでシステム導入には、ハードウェア設計、ネットワーク設計、ハード調達、電源工事、耐震工事、ネットワーク契約、サーバーラック調節、OSインストール、パッチ対応、ソフトウェアインストール等々の構築が必要でしたが、Amazonクラウドなどでは、同じ機能を得ることが数分でできてしまいます。



クラウドは、スケールアウトもスケールアップも容易なサービスがあります。


ウェブ画面から造作なく可能になります。


Rackspaceなどのクラウドは、iPhoneからスケールアウトが簡単にできてしまい、最初開いた口がふさがりませんでした。




SIerは、システムを内部に設置しないといけない条件であれば、従来の技術が活かせると思います。


一方で、外部のクラウドにサービスを置いてもいいと判断されるサービス、企業は、コスト的にクラウドを利用すると思います。



政府ですら、外部のクラウドを基盤に使ったりしているので、人の命や財産に係る基幹業務以外は、おそらく今後もクラウドに大部分が移行していくと思われます。




SIerと人月モデル

Publickeyのインタビューでは、SIerは、開発速度で価値を生み出すモデルに移行する提案がされていました。

一理あると思います。しかしこの場合は、人月モデルの延長上です。



ロジカルに見たら、(開発)時間を価値に変えている点では、人月モデルの特急料金版です。


しかも要件定義の変更で、はみ出した工数分については、人月モデルへ先祖帰りしないと、再見積もりできなくなります。


例えば、新幹線で大阪に向かう途中、台風が来たため、一度、新大阪から名古屋に戻って、2泊して、夜行で大阪を目指すような感じです。そんなデスマーチな旅はいやですが。




SIerにとって、クラウドが出てこようが、アプリを自動的に創るGeneXusが出てこようが、変わらぬものがあります。










それは








保守サービスです。








保守サービスは基本、人月モデルです。



常時3人張り付き、24時間1年間とかいう計算で割り出せます。



人月モデルが善か悪かの宗教論争より前に、経済性について言えば揺るぎないものがあります。



保守サービスは、SIerの最後の砦です。


SIのなかでも一番安定したランニングモデルです。



人月の神話

開発の人月モデルは、たしかに、クラウドやGeneXusみたいなものが台頭してくると、減っていくと思います。


開発案件の規模や件数自体、減ると思います。




しかしシステムを監視、運用、管理することは、まだまだSIerの力が必要です。



ただの有人監視ですが一番安定したビジネスモデルです。



その場合の見積もりは、ユーザーにとってもSIerにとっても人月モデルが一番、適しています。



さんざんSIで苦しめられてきた人月モデルに、SIは救われるような気がしました。




人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))

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